社会人2年目、奴隷1年目

 

内線表にある私の名前から(新)という文字が消え、新たに見慣れない名前の横に(新)という文字が現れたことで、私は社会人2年目になったことを自覚した。

私が3月まで1年目として所属した部署は事業部編成によって消滅し、私は新たな部署に異動することとなった。同じ会社であるが、扱うモノも仕事のやり方も、もちろん客先も1年目とは全く違う。こうして、2回目の社会人1年目のような気分で私の社会人2年目はスタートした。それと同時に、私の奴隷生活1年目もスタートした。

 

結論から言おう。私は今の部署で、奴隷のような役割を見事に果たしている。やっている仕事は、仕事と言うにも似付かわしい雑用ばかりである。内容としては、1年目の4月にやるようなことばかり。これを2年目の5月にやっているというのが、未だに信じ難い。ダンボールに物を詰めすぎて、そろそろダンボール側から拒否されてもおかしくない。この1か月余りで、これまで使用してきたガムテープの量と同じ量を使った気がする。

これまで私がブログを書くときは「いい文章だなぁ」などと思われたいがために、着飾った文章を書くのが恒例だった。しかし、今日のブログは違う。ゴミ箱に向かって叫び倒したい言葉たちを、キーボードに書き殴っていく。Twitterの140文字で表現しようとすると「ウザい、しんどい、クソが!」で完結してしまうような内容だが、この場を借りて日頃の鬱憤を晴らさせて欲しい。

 

以前ブログで書いた、「過去の有能だった自分」と「現在の無能な自分」とのギャップで苦しんでいたあの時期に、こうなることなんて予想もしていなかった。

あれから私は自分なりに色々と頑張り、何とか様々な仕事をこなせるようになっていた。今思えば、あの頃は本当に幸せな生活だった。分かりにくく野球で例えると、一軍のベンチに座らせてもらっているような感覚だった。実践の現場を肌で感じさせてもらい、時折試合に出してもらえることもあった。そういった実戦経験の中で様々な成功、失敗を重ね、今の自分に足りないもの、今後できるようになりたいこと、継続していきたいことなどをその都度見つめ直し、実力をつけるための糧にしていた。こうして少しずつ仕事の範囲が広がってきた中で、2年目になったらこういうことも自分でしてみたい、これをできるようになりたいといった様々な目標や自信が芽生えてきた。そんな矢先での部署移動だったのだ。

そして、2年目を迎えた今の私を再度分かりにくく野球で例えると、「ベンチ裏で選手のドリンクを作る補欠くん」である。当然試合には参加させてもらえない。ひたすら先輩たちのためにドリンクを作り、遠い所から先輩たちが実践の場にいるところを見ているだけ。1年目の終わりに「2年目ではこんなことやりたい!」と思っていた目標は、いつの間にか毎日の雑用に紛れ、ダンボールに入れて佐川急便で出荷してしまっていたようだ。やりたかったことなど一つもできず、ただただしょうもない雑用を繰り返すのみの日々である。

 

ここまで聞くと、2年目なんてまだまだペーペーなんだから雑用なんて当たり前だろうという声が四方八方から浴びせられることだろう。仰る通りである。私の中では、雑用なんて1年目でも2年目でも5年目でも10年目でもやるべきことだ。私の中で納得いかないのは、1年目で良い経験がたくさんできた中で2年目にこんな雑用まみれの日々に逆戻りしていること。自分がすべき範囲の仕事の雑用ならまだしも、全く関係ない仕事の雑用までさせられること。それらの雑用を押し付ける先輩たちが、「私の成長のため」という理由でそれを正当化していること。

 

何度思い返しても、1年目は本当に良かった。毎日違った内容の、様々なパターンの仕事に取り組めていた。先輩の一挙一動を近くで見ながら、自分だったらどうすればいいのか、今の自分が学ぶべきこと、真似すべきことは何かを常に考え、頭をフル回転させながら毎日を過ごしていた。ずっと悩んでいた「仕事が難しい」というのも、今思えばあれだけしっかりとした内容の仕事を頭を使いながら取り組んでいた訳で、それは当然難しいものだったなと思える。

そこから自分がどうステップアップしていこうか、期待と経験値に基づく自信で胸を躍らせていた私に待ち受けていたのが、頭を一切使わない雑用の嵐だったのだ。チンパンジーでも数日間訓練を受けたらあっという間にできるようになるような、"質"の低い仕事だ。量も多いから毎日遅くまで雑用に追われ、窓に映る自分がかなり指先の器用なチンパンジーに見えてくる。奴隷らしく足に鉄球を付けられているような感覚にも襲われるため、帰宅時はどうも足が重い。そんな時、毎回のように「俺は何をしているんだ」という悲壮感に襲われる。同じく2年目を迎えた周りの同期は既に自分の足で歩き回っているというのに、私は未だにハイハイをしている。そんな現状に焦りを覚えるとともに、歩くきっかけすら与えてもらえていない状況に絶望感を覚えている。1年目と比べた時の遥かな"質"の物足りなさ、自身で立てた目標と現状の大きな乖離、周りの同期との"差"。この3つが、雑用の嵐に飲み込まれてもがき苦しんでいる自分に更なる絶望を与えている。

 

そして、雑用の範囲というものも私にとって大きな問題だ。私は今、同じ部署3人の先輩の雑用をしている。1人は私が付いて仕事をする先輩だが、他2人と一緒に仕事をすることは殆どない。それなのに、その2人の雑用も私がしているのが現状だ。むしろ、その2人の雑用は私が付く先輩の雑用の4倍ほどの量だ。異動初日のミーティングで私に「仕事は自分の成長のためにやって欲しい」と偉そうに語っていた先輩が私に数多の雑用を押し付けてくる度、5秒だけ時を戻す力が欲しくなる。もしそんな力が私にあれば、その先輩を「偉そうに語りやがって!」とグーで殴り、すぐに時を戻すだろう。

毎回思う。「自分の仕事くらい自分でやれ」ということを。面倒くさい所だけを人に押し付けて大事なところだけ自分でやる。ある意味社会の摂理なのかもしれないが、押し付けられる側はたまったもんじゃない。自分がすべき仕事の雑用だったら喜んで、何でもやる。それは自分のためであり、やらないといけないことだから。ただ、現在の関係のない先輩の雑用は、本当にやる意味がない。ただ都合がいいように利用されているだけである。2年目の私が部署に異動してきたことは、先輩たちにとっては「使い勝手のいい奴隷が来てくれた」と喜ぶようなことだっただろう。

そして何より納得できないのが、それらの雑用を「私の成長のため」と正当化して押し付けてくることである。いくらダンボールに物を詰めて発送しても、私がなれるのは優秀な営業マンではなく、お片付けマイスターか何かである。それを「私の成長のため」という「面倒くさい」の隠語で押し付けてくるのが本当に腹立たしい。「面倒くさいからこれくらいお前がやっておいて」と言われた方がまだマシかもしれない。いや、恐らく本当にそれを言われたらグーで眉間を行ってしまうだろう。1年目の時の先輩は、私の成長のためにと実践の場でバットを振らせてくれた。いくら空振りしても、アウトになっても、それを糧にしろとまた新たにチャンスをくれて、それによって私は経験値という大きなものを得ることができた。今は経験値どころか、ガムテープをいかにキレイに切るかということしか考えられていない。こんな現状、本当にウンザリなのである。

 

2年目になって初めて、「仕事がつまらない」と思うようになった。社会人になった際の信念として、「仕事がつらい、大変というのは覚悟の上だからどれだけ大変でもめげない。ただ、仕事がつまらないと感じるようになってしまった時はスッパリと辞めたい」と思っていた。しかし、今もうその状態に陥っている。質の低い仕事と言っていいのか分からない作業を、ただただ長い時間続けるだけの"作業"。さすがにこの状態で辞めるということはしないが、このままこれが続いたら私が3年目を迎えることは無いかもしれない。

私自身、自分で言うのもおかしいが仕事に対してはかなりモチベーションを高く持っている。1年目は内容こそ充実していたものの量がそこまで多くなかったので、もっと遅くまで、沢山仕事をしたいと思っていた。本当である。働き方改革が進む世間において残業ウェルカムの思想を持つ、現代社会のチェ・ゲバラである。嘘である。

そのため、雑用ばかりさせられてメインの仕事はロクに触らせてもらえない中、自分なりに1年目の経験を生かしてメインの仕事に手を出してみてはいる。実際に何度かやり、きちんと仕事をできたものの、先輩からは「それは営業の仕事じゃない」だの「俺がやるからいい」だの言われる。自分がやっていないから私がやったのに、いざ手を出されたらそんなことを言うなんて、どうかしていると思う。これが、私が奴隷である所以である。やっていいのは雑用だけ。さっさとこんな状況を抜け出したいので、やらなくていいと言われながらも自分にやれることは勝手にやっている。これで何かが変わるなら、と。これを繰り返す中で、じゃあもうやったらいいよと先輩が折れてくれるのを待つしかない。仕事がやりたいのにやらせてもらえないというのが、ここまで辛いと思わなかった。

 

ここまでツラツラと心情を吐露したが、まぁ簡単に辞めようとは思わない。せっかく入れた業界であり、1年目は仕事が楽しかった訳で。また仕事が楽しいと思えるようになる日まで、雑用の嵐を耐え抜き、自分なりに努力するしかない。帰宅時間はかなり遅くなったが、極力自炊を頑張る生活も続けている。1年目の後輩に挨拶されたときに、どう返せばイキった先輩と見られずに済むかという疑問の答えは、未だに模索中だ。今年の新卒、全然挨拶しないんですけどね。とにかく、2年目は1年目よりもっと成長できるよう、こんな状況下でもきちんと頑張ろうと思う。

とりあえず、上司や取引先の人にゴルフに誘われているときの上手い断り方、誰か教えてください。